トップページ > スタッフブログ
2017年07月25日
消費税について免税事業者は益税メリットが生じるため、節税策を封じるための税制改正が繰り返されている結果、納税義務の判定は極めて複雑になっており、税理士や税務署の調査官でも正確に理解している方は少ないのではと思います。以下、現行制度の概要を整理しますが、厳密な記載にはしていないため、実務にあたる際は法令や国税庁のサイトにあたってください。
原則:基準期間の課税売上高が1千万円超は課税事業者、1千万円以下は免税事業者
基準期間とは従来、2期前の事業年度でしたが、H23年度の改正で2期前の売上高が1千万円以下でも1期前の半期の売上高が1千万円を超える場合は課税事業者になるよう課税が強化されています。「法人設立後2年は消費税を納めなくていい」というのはこのルールによるもので、個人事業者の法人成りのインセンティブの1つになっています。
基準期間がない場合の例外①:期首資本金が1千万円以上の新設法人は課税事業者
基準期間がない場合の例外②:間接保有を含む株式の50%超保有会社の課税売上高が5億円超の場合は課税事業者(特定新規設立法人)
上記例外①は従来からあったルールですが、免税メリットを狙う場合は資本金を1千万円未満にすればよいので節税の抑止力という意味では弱いルールでした。そこでH25年に例外②が導入されました。従来であれば、法人が新規事業に進出する際、資本金1千万未満の子会社を設立すれば2年間は免税メリットを享受できたわけですが、この規制の導入により不可能となっています。ただし、実務における定着度は低いといわざるを得ず、例外②に該当するにも関わらず消費税の申告を行っていない会社に多数出会います。
例外③:課税事業者が1,000万円以上の高額特定資産を購入/建設した場合は、翌3期は課税事業者
これはH28年度改正により導入されたルールですが、いわゆる「自販機スキーム」に対処するために導入されたものです。自販機スキームについては本ブログの別記事をご参照ください。
2017年05月29日
北海道標津にあるいくら生産業のマ印神内商店さんの顧問をしているのですが、ここのいくらが食べられるお店がGINZA SIXに出来たと伺って本日行ってきました。6階の銀座大食堂内にある「UEDAGUMI Hokkaido Dining」さんです。
詳細はお店のサイトをご覧頂きたいのですが、神内商店のいくらは銀座の高級寿司店などでしか食べられない究極のイクラです。
今日は奮発して六宝丼を頂きました。究極のいくらの他、ウニ、カニ、ホタテ、サーモン、たこと海のオールスターをふんだんに頂くことができ大満足でした。
私たちが普段食べているいくらとは次元の違う美味しさですので本当にお勧めです。銀座にお越しの際は是非お立ち寄りください。
宮口
2016年12月08日
本日、平成29年度税制改正大綱が自由民主党のホームページにて公表されました。
詳細はこれから確認しますが、以下のとおり資産税関連の改正が目白押しです。
①類似業種比準方式の見直し
②株式保有特定会社の見直し
③事業承継税制の緩和
④タワマン課税の適正化
⑤クロスボーダー贈与の強化と緩和
本ブログでも頭出ししていましたが、ついに非上場株式の評価方法が改正されることになります。
類似業種比準方式については、①類似業種の株価について過去2年平均が使えるようになるとともに、②類似業種の業績数値は連結決算が反映されることになります。また、③配当/利益/純資産のウェイトが現行の1:3:1から1:1:1に戻されることになります。
法人課税についてはスピンオフの無税化やスクイーズアウト時の対価要件の柔軟化など久しぶりに組織再編税制が大きく変更される点が興味深いところです。また、国際税務では外国子会社合算税制(タックスヘイブン税制)が大幅に見直されます。
懸案の中小法人特例についてはついにメスが入り、平成31年4月1日以後開始事業年度からは、資本金が1億円以下であっても、過去3事業年度の平均所得が15億円を超える事業年度について適用されないこととされました。
法人課税については来年1月6日発行予定の「旬刊経理情報」に速報を寄稿しますのでご興味ある方はご覧になってください。
宮口
2016年09月23日
ポピュラーですが生命保険を用いた法人の節税策についてまとめます。
1.基本形
よくあるケースは役員退職金の支給原資確保のため社長を被保険者とした逓増定期保険に加入するケースです。保険料は1/2が損金算入されるケースが多いですが、加入から4~5年後に解約返戻率が85~95%と高率になるため、退職の5年前程度に加入するケースが多いです。
例えば死亡保険金1億円、年間保険料26百万円の定期保険に加入し、4年間保険料を支払った上で、5年目に解約し、累計保険料の90%の解約返戻金を退職金として支払った場合の収支は以下のように計算されます。なお、法人実効税率は35%と仮定します。
1年目~4年目:累計支払保険料▲104百万円(26百万円×4年)+累計節税効果18百万円(26百万円×1/2×法人実効税率35%×4年)=▲86百万円(①)
5年目:解約返戻金94百万円(104百万円×90%)-税金0=94百万円(②)
解約時の税金がゼロなのは退職金として94百万円支払うためで、保険会社の営業用資料では②÷①で、返戻率109%などと表記されますが、保険契約単体で考えると単に利益を繰延べているだけであり、10%のコストを支払っているに過ぎない点は気を付ける必要があります。ただし、退職金や設備投資など将来に損失が生じることが明らかなのであれば利益を繰延べて損金効果を前倒しでとるメリットが生じます。また、業績変動が激しい会社なども黒字の時期に保険加入しておき、利益を平準化することがまさにリスクヘッジとなります。
さらに保険料の損金算入により、課税所得を引き下げることにより、類似業種比準方式や純資産価額などの税務上の株式評価額も低下しますので、事業承継対策に活用することも有用です。
2.応用形(低解約返戻金型逓増定期保険の譲渡)
これは、契約当初は解約返戻率が極端に低く、ある時点で高くなる「低解約型逓増定期保険」を用いて会社の所得を個人にシフトすることで節税を図るスキームです。
例えば上記1に記載した逓増定期保険の解約返戻率が4年目終了時点では10%と仮定した場合、4年間、会社で保険料を支払った上で社長に時価(解約返戻金額)で譲渡し、5年目に社長が解約した場合の収支は以下のようになります。なお、社長の所得税率は仮に20%で計算しています。
(法人)
1年目~4年目:累計支払保険料▲104百万円(26百万円×4年)+累計節税効果18百万円(26百万円×1/2×法人実効税率35%×4年)=▲86百万円(①)
4年目末:譲渡代金10百万円(104百万円×返戻率10%)+税効果15百万円((譲渡代金10百万円-保険積立金52百万円)×35%)
=15百万円(②)
(社長)
4年目末:譲渡代金▲10百万円(③)
5年目:解約返戻金94百万円-所得税8百万円(((返戻金94百万円-取得価格10百万円-控除額0.5百万円)×1/2)×20%)
=86百万円(④) ①+②+③+④=5百万円
返戻率による10%の費用負担はあるものの、法人で費用を計上し35%の税効果を取りつつ、個人では一時所得として低率課税を受けることで節税が図れることになります。ただし、近年税務当局もこうした節税策を問題視しつつあり、平成30年1月以降の名義変更については保険会社が税務署に提出する法定調書に記載されることになったため、通達の改正や執行も含めて留意する必要があります。
宮口
2016年09月18日
個人事業主の節税の王道として奥さんに給与を支払う青色専従者控除の制度があります。当然に給与をもらう奥さんは所得税が課税されるわけですが、事業主よりも適用税率が低いため、奥さんに所得をシフトすることで夫婦全体で見ると節税となる理屈です。
ここで奥さんの年収を103万円未満にすると給与所得控除65万円と基礎控除38万円が差し引かれて奥さんの所得がゼロになり課税されないのはパートの103万円の壁としてよく知られていますが、住民税は基礎控除が35万円なので年収が100万円を超えると課税が生じることを最近知りました。どうして基礎控除について差異が生じるのか税金のマニアックなところです。
また、社会保険については年収が130万円を超えるとご主人の扶養を外れるため、国民年金や健康保険への加入義務が生じます。節税の観点からは奥さんへの給与は多額の方がよいのですが、この扶養を外れるという点に心理的抵抗が大きく130万円の範囲で給与を支払うケースも多い気がします。
当方会計士あがりの税理士のため社会保険の分野はあまり知見がないのですが、個人のお客様を相手にする場合、税務と社保の両面を考慮したアドバイスが求められると感じており、意識的に学習するようにしています。個人事務所で給与計算の経験を積んだ税理士の方であれば何を今更という論点だと思いますが、大法人の税務に特化していた私としては非常に興味深く、今後ノウハウを貯めていこうと思っています。
宮口