宮口公認会計士・税理士事務所

代表コラム

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東証市場再編に伴う資本取引期待

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2021.5.30

ご案内の通り、2022年4月より東証の各市場(一部、二部、マザーズ、JASDAQ(スタンダード・グロース))が「プライム」「スタンダード」及び「グロース」の3区分に再編されます。現在東証上場企業約3,700社の内、一部上場企業は約60%の2,200社もありますが、PBR1倍割れ企業が半数近くもあり質の低下が指摘されています。現在、直接一部に上場する基準は時価総額250億円ですが(なお、リーマンショック前は500億円)、二部やマザーズなど他市場からの上場の場合は時価総額40億円で認められるという裏口があり、一般の人が思うより一部上場企業になる基準は低いことも要因となっています。

筆者も20年前に証券会社でIPOに関与していましたが、当時もまずJASDAQに上場してから、1,2年したら株を放出して東証1部に行きましょう的な提案をよく行っており、一般的には圧倒的なブランド力を持つ「東証一部上場企業」の看板も意外に対したことはないなと感じたことが思い出されます。

今般の市場再編は、上場基準を厳格化することにより、市場の魅力を高め、香港や上海など海外市場との競争に伍していくことを目的としています。最上位市場である「プライム」では250億円以上の時価総額が求められることになり、6~700社程度が脱落する計算になりますが、経過措置があり「上場維持基準の適合に向けた計画書」を提出することでいきなり脱落にはならないところがいかにも日本的なところです。

個人的に注目しているのが上場維持(廃止)基準の強化で「スタンダード」市場で言えば流通株式時価総額が10億円以上、流通株式比率が25%以上が求められます。流通株式はいわゆる浮動株ですが、従来、10%以上の主要株主、役員及び自己株式を除いた株数で判定されていたところが、事業会社や金融機関の政策保有株(いわゆる持合株式)も除くことになり、要件が厳しくなります。

こちらも経過措置があり、当面は現行同様の流通株式時価総額は2.5億円以上、流通株式比率は5%以上に緩和されるものの、要件を満たさない会社については上場維持基準適合に向けた計画的な取り組みが求められます。

この点、上場維持基準を満たすために持合株式を売却する動きも既に生じていますし、M&Aによる業界再編を後押しする側面もありそうです。また、逆に上場維持をあきらめてMBOで市場から退出する企業も相当数生じるものと想定しています。

いずれにしても本市場再編を機に各種資本取引が活発化することが想定され、当事務所の業務提供機会も増加することを期待しています。

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