COLUMN
昨年12月19日に「令和8年度税制改正大綱」が公表されました。
法人については経済活性化のための各種減税措置が複数盛り込まれる一方で、個人についてはミニマム課税の強化など富裕層をターゲットにした課税強化のトピックが多い印象です。
この中で、個人的に影響が大きいと考えているのが大綱100ページ目に記載のある「企業グループ間の取引に係る書類保存の特例制度」の創設です。概要は添付PDFをご参照ください。
内国法人と「関連者」との取引について取引の明細や対価の明細が記載された書類(注文書、契約書、送り状、領収書、見積書等)の保存を求め、ない場合には別途作成を求める厳しい規定です。違反した場合には青色申告の取消事由にもなると大綱に記載されています。
実務的には、企業に多大な追加事務負担を求める制度となりますが、上記関連者の定義が現状不明です。添付した政府税調の資料では主には国外関係会社との取引に係る税務調査の実効性確保を目的として導入される制度であり、そうであれば内国法人間の取引は対象外とすべきというのが実務家としての当職の意見です。
大綱では関連者は「移転価格税制と同様の基準により判定」と書かれていますが、移転価格税制は「国外関連者」を対象とした制度であり、内国法人との取引が対象となるのかが大綱では読み切れず、今後の法案公表が待たれます。
大規模法人に対するその他の税制改正項目については中央経済社から1月20日発売予定の「旬刊経理情報」にも寄稿しますのでご興味ある方はご覧ください。
(2026年1月5日追記)
BEPSプロジェクトに基づく各種国際税制も同様な側面があると思っていますが、ごく一部の不届き者のために大多数の誠実な納税者に多大な事務負担を負わせる最近の税制の流れにはいささか疑問を持っています。青色申告取消しは一般の納税者にとってはかなり強い罰則ですが、本特例が射程とする悪質な納税者にとってはあまり効果をなさないかもしれません。結果的に税務調査の実効性強化には寄与せず、善良な納税者の事務負担が増すばかりになってしまうことを懸念しています。
グループ間の経営指導料やシェアードサービスの対価などが本件特例の対象となってきます。例えばシェアードサービス会社がグループ各社に対する請求額は全体のコスト(ないしは全体のコスト+適正利益)を各社の業務工数で按分して請求するケースが多いと思いますが、期初に見込んだ工数と実際の工数に大幅な差異が生じることも当然に生じます。
このような場合、実際の工数で対価を再計算すべきなのか、期末での再計算は損益調整とみなされがちなので当初の想定で走るべきなのか、ガイドライン的なものがないと税務調査の現場でいいとこどりをされてしまうリスクも生じうるかと思います。
制度導入の趣旨は理解できますが、制度設計及び実務運用の両面において真面目な納税者に十分配慮した制度となることを祈るばかりです。
(2026年1月6日追記)
上記のグループ間の経営指導料などは対価の設定方法は各社各様であり、毎月定額での徴収や経営指導の結果である業績指標(例えば売上高や営業利益)の何%といった形での徴収が一般的との理解です。依拠すべき算定方法がない中で納税者に一方的に説明を求めさせるのは酷な気もしています。
一方で、グループ法人税制やグループ通算制度など、企業グループを一体と見る税制度も随時導入され、実務上も活用が進む中で、上記の単体主義との関係をどう整理するか、より俯瞰した目線での制度構築が求められていると感じます。
全くの極論ですが、上場企業については公表連結決算に基づいた税務申告を認めてもよいかもしれません。当然に一定の税務調整を行った上でですが。
地方税との兼ね合いもあり難しいことは百も承知なのですが、入口段階で複雑な制度で国と地方に税金を申告させつつ、出口段階でも国が地方に税金を分配していることは制度としてどうなのか、そこにノイズとしてのふるさと納税が介在して地方自治体間での税金の取り扱いが過熱しており、受益と負担の原則からゼロベースで考えるべき時期に来ている気もします。
思いの他長くなってしまいましたが、日本の上場企業が海外企業としのぎを削って競争している中で、本来、企業の経済活動をバックアップすべき税制が足を引っ張るようなことがないことを祈っています。
宮口徹
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