2015年10月10日
今週、とある不動産業者の方と面談し、米国不動産投資による節税策の説明を受けました。
米国の中古アパートやコンドミニアムに投資し、5年経過時に売却することで節税メリットを享受するスキームです。
木造アパートの法定耐用年数は22年ですが、中古資産の耐用年数が使えますので耐用年数が経過した資産の耐用年数は4年となります。米国不動産を対象とする目的は、中古市場が成熟しており売りやすいことと、日本とは異なり、建物の価値が減価しない点にあるとのことです。一般的には物件価格のうち70%から80%が建物部分として評価されるため、多額の償却損が取れるとのことでした。
減価償却費の計上により不動産所得の赤字を計上して給与と相殺し、節税を図ったのち、長期所得となる5年後に売却して、投資回収を図ります。例えば利回り5%の物件価格10,000(内建物7,000、土地3,000)の物件を米国で調達したローン(金利5%)で取得した場合、賃料と金利が同額のため投資利益はでませんが、5年間で建物簿価7,000の償却費がとれますので、仮に物件が取得時と同額の10,000で売れた場合、譲渡益が7,000生じます。
仮に投資家が最高税率55%の高額所得者であれば、償却費と給与の相殺により、3,850(7,000×55%)の所得税が減少する一方、売却益に対して1,400(7,000×20%)の所得税がかかりますので差引き2,450(税率35%分)もの節税が可能となります。
現状、米国も不動産市況が活況であり、4%~8%程度の利回りしか見込めない点は、日本の不動産投資と同様ですが、節税メリットを考慮した場合、検討に値する投資スキームと思いました。なお、不動産投資ですので、当然に空室リスクがあり、現地の管理会社を使うコストがかかること、また、為替リスクもありますので慎重な判断が必要です。投資は自己責任でお願いいたします。
ご興味があれば、ご相談ください。
2015年01月03日
昨年12月30日に平成27年度税制改正大綱が公表されました。国境をまたいだ租税回避行為を規制するBEPSプロジェクトを受けて以下のような改正が行われています。
①海外業者が行うインターネットによるコンテンツ配信につき消費税を課税取引化し、国内事業者にリバースチャージ方式を導入
②損金算入配当(例:オーストラリアのMRPS(償還優先株式))につき二重非課税を認めず、外国子会社配当益金不算入の対象外に
③タックスヘイブン対策税制のトリガー税率を20%以下から20%未満に(2015年から法人税率が20%に引き下がるイギリスに配慮)
④コーポレートインバージョン対策税制につき軽課税国の判断基準を見直し
内容につきご質問があれば当事務所にお気軽にご相談ください。改正の詳細については自由民主党のホームページにて税制改正大綱原文をご覧ください。
2015年01月02日
平成27年税制改正大綱が年末30日に公表されました。
想定通り、法人、個人ともかなりの改正が行われます。主なものは以下のとおりです。
【法人】
①法人実効税率につき現行の34.62%から32.11%(H27年度)、31.33%(H28年度)と段階的に引き下げられる
②大法人の事業税の外形標準課税(付加価値割・資本割)につき段階的に2倍に
③大法人の繰越欠損金の控除限度が現行の80%から65%(H27年度・28年度)、50%(H29年度)と段階的に引下げられる
④受取配当の益金不算入につき全額益金不算入できる持株比率が25%から1/3超に引上げ
⑤試験研究費控除や所得拡大促進税制の見直し
⑥特定資産の買換え特例(9号)の延長と一部縮減
黒字企業には歓迎すべき税率引き下げが行われる一方で、欠損金制限や外形標準課税の強化など赤字企業には厳しい項目が並んでおり、企業の新陳代謝を促進するアベノミクスの考えが反映された改正と整理しています。
ただし、懸念していた中小法人に対する課税強化は見送られましたので当面は減税のメリットのみ享受することが可能となります。
また、グループ会社を有する会社にとっては資本政策の巧拙により税負担が大きく変わりますので早期の検討が必要です。
【個人】
①NISAの非課税枠につき年間120万円(現行100万円)に拡充
②住宅ローン控除につき適用期限を1年半延長
③ふるさと納税の控除限度額につき現行の2倍(住民税所得割の2割)に拡充
④住宅資金贈与の特例の拡充
⑤結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置(最大1,000万円までの贈与につき非課税)の創設
⑥財産債務明細書が財産債務調書となり、提出要件につき所得2千万円超に加えて、保有財産の時価3億円以上などが加わる
⑦海外移住する場合に保有する時価1億円以上の有価証券の含み益に対して課税
財産債務明細書の提出要件の加重や海外移住に係るExit-TAXなど、富裕層に影響のある項目も多数盛り込まれています。
以上、詳細については当事務所にお気軽にご質問ください。また、法人税に関する改正項目の概要については1月20日発売の旬刊経理情報に寄稿する予定ですので、そちらもご参照ください。
2014年12月20日
税制改正大綱の公表時期、先日は年明けにずれ込むと記載しましたが、年末12月30日を目指して取りまとめが行われているようですのでアップデートまで。
先日記載した項目の他、地方創生絡みの制度が創設されるようですが、単なるバラマキにならないよう期待したいところです。
2014年12月01日
税制改正大綱については例年12月に公表されますが、今年は年末に総選挙があるため年明けにずれこむとのことです。現時点では1月中旬頃となる可能性が高いようです。
気になる内容ですが、法人税率の引き下げが期待される一方で、財源確保のため、配当課税の強化や欠損金の利用制限の強化が見込まれている他、外形標準課税の強化なども予定されています。
当事務所の主要サービスであるM&A、組織再編のストラクチャーにも大きく影響する項目が目白押しですので注視して行きたいと思っています。
宮口