COLUMN
昨年12月19日に与党から令和8年度税制改正大綱が公表されました。昨年度に引き続き所得税の「年収の壁」が大幅に引き上げられるなど多方面に渡って大きな改正が行われますが、本コラムでは富裕層ミニマム課税の強化について解説します。
富裕層ミニマム課税はいわゆる「1億円の壁」の是正のため昨年分の所得から導入された制度であり、高額所得者について最低税率に達するまでの所得税負担を求めるものですが、下記のとおり、来年から特別控除額が半額に引き下げられるとともに最低税率が30%に引き上げられます。
---------------------------------------------------------------------
【制度概要(太字が改正点)】
②が①上回る場合に差額分を追加納税(所得税)
①通常の所得税額
②(基準所得金額(注)-特別控除額3.3億円→1.65億円)×22.5%→30%
(注)上場株式配当や上場株式譲渡等の申告不要制度を適用しないで計算した合計所得金額。源泉徴収ありの特定口座内での各種所得や源泉分離課税の退職所得も含む
---------------------------------------------------------------------
M&A等の株式譲渡の文脈で言えば、従来であれば譲渡所得が10億円を超えてくるレベルで心配すればよかったのが、改正後は譲渡所得が3.4億円を超えてくると追加の税負担が生じますので企業オーナーにとっては売却タイミングの検討や手残りの計算にあたって注意が必要です。
ちなみに譲渡所得の住民税を含めた税負担率は通常であれば約20%の所、5億円の水準で約25%となり、10億円で約30%、50億円で約34%となる計算です。
M&Aのアドバイザーにとっては早期売却を勧めるセールストークに使える材料にはなります。
税理士の立場として、この制度のやっかいな所は株式の譲渡所得の他、給与所得、退職所得、不動産所得など他の所得も合算して基準所得金額を計算する点にあります。基準所得金額には、源泉徴収ありの特定口座内での各種所得や源泉分離課税の退職所得も含みますので、従来であれば申告にあたり無視できた情報であっても、所得が億単位になってくる方については収集する必要があるということになり、手間が非常に増加します。
納税者の属性や所得階層によって税務申告の難易度が格段に異なってくるという波が法人税務に加えて個人税務にも押し寄せてきたと感じています。
宮口徹
COPYRIGHT 2024 ©MIYAGUCHI ACCOUNTING & TAX OFFICE. ALL RIGHTS RESERVED.